Novel
能力空間-Ability Space-

First Chapter 能力-Ability-


「誰だ!?」
 金部が叫ぶ。不良の増援というわけではなさそうだ。扉の先には綾とケイがいる。
「千樹。お前なにやってんだ?」
「別にいいだろ。逃げろ!」
 綾とケイを巻き込むわけにはいかない。
「コイツ等は午前俺を殴った。俺は千樹につくぜ」
 そういうと綾は俺の方にくる。今の様子だと影がみえていないのか?
「闇の能力者か…」
 ケイが呟く。
「ケイ、今なんていった?能力者って…」
「あ?別にいいだろ。今はこの場を凌ぐことが大切だろ?」
「そうだな」
 俺は心で影に命令する、不良を倒せと。そこに綾が加わる。
「不良は綾に任せてと…金部を倒せば事は収まるんだな?」
「ああ、多分な」
「それじゃ…」
 ケイは目を閉じ何か呟く。そして叫んだ。
「羅衝剣!」
 叫ぶとケイの手に剣が現れる。
「な、なんだよそれ!?」
 ケイも能力者だっていうことなのか?
「俺もお前と同じ『光の能力者』だからな」
 …光の能力者?さっきは闇の能力者といっていたが…となると金部がいっていた『あちら側』とは光の能力者のことになるのか。
「それじゃ、俺の影はみえているのか?」
「ああ」
「あーやはどうなんだよ?」
「綾も能力者だ。風を操るな」
 知らなかった。知らなかったのは俺だけなのだろうか?…そして戦いの幕が開く。
「さてと…羅衝剣!」
 ケイはそういい剣を一回り大きくし金部に向かい走る。
 そこに不良の一人が飛び出す。羅衝剣はその不良を肩から脇腹にかけて両断する。
 不良は跡形も無く吹き飛ぶ。
「な、なんてことを…」
 ケイが人を殺した。その事実はかなり重いことだった。
「へ、それじゃコイツ等が死ぬぜ。」
「かまうか!今はお前を止めるのみ!」
 ケイは金部の胸に羅衝剣を突き刺す。
「クソ、俺が…死ぬだと…?」
 金部はその場に倒れ込む。
「終わったな」
 ケイはそういい屋上を出ようとする。綾は倒れた不良達を踏みつけている。
 操りは解けたのだろう。
「お、おい。殺したのかよ…」
 そういいケイに話し掛けようとする。と、後ろに気配を感じ振り向く。
「まだ…だぜ…」
 金部はそういいポケットに手をいれなにかを取り出す。
 それはカプセル錠の薬みたいなものだった。それを口に含み飲み込んだ…
 金部は叫び…人間である事をやめてしまった。
 体は巨大化し服は破け悪魔の翼のような物が生える。
「なんだと…こんな!?」
「ははは、死ね…皆殺しだ!」
 金部の翼は風を起こす。それは俺達の体を裂く。
「くそ、操りが解けたら今度は怪物かよ。冗談じゃねぇ…」
 綾はそういう。綾の身体は傷ついていない。風を操るからか…
「影、消えろ」
 俺はそういい影を消す。俺へのダメージ。影へをダメージ。二つ重なり辛かったからだ。
「怪物相手なんて…辛すぎるぜ」
「光の能力者など…皆殺しだ!」
 金部は空へ飛びそして俺に目標を絞り下降、突撃してくる。
「く、どうする…」
 逃げようとするが場が無い。俺の前に綾が飛び出す。
「やめろ!!!」
 綾は金部に突き飛ばされひどい傷を負う。俺はたまらず叫んでいた。
「影、行くぞ!!」
 影を呼び出し金部の方向へ向かう。が、金部は空に上がってしまう。
 俺は影を踏み台に飛ぶ。金部の腹部に蹴りをいれ共に落ちる。
「なんだ…と」
 金部は倒れている。そしてケイが言う。
「千樹、コレを使え!」
 ケイは俺に羅衝剣を投げる。受け取り金部の上に乗る。
 こうなったら殺人もくそもない。金部はすでに人間ではない。そう判断した。
「羅衝剣!!…死ねぇ!」
 金部の心臓を一突き。そして金部の身体は弾けるように消える。
「やった…のか?」
「ああ、今度こそ終わりだ」
『うけけ』
 後ろから声がする。振り向くと一羽の烏がいる。
『金部は力を失った。次はお前等が死ぬ番だ!』
 そういい烏はどこかへいってしまう。
「あれは?」
「あの烏は闇の能力者共の使い魔さ。気にしなくていい」
「そろそろコイツ等が起きるぜ」
 綾はそういい不良達を指す。
「ここは一旦引くか」
 そういいケイは出ていく。綾は俺の側に近寄り一言。
「千樹が能力者だったなんて知らなかったぜ。それじゃ、後でな」
 綾も屋上からでていく。続いて俺も屋上を後にする。時計をみる。
「もう三時か…」
 谷が気になり保健室に向かう。さっきの傷も消毒したかった。保健室の戸を開ける。
「失礼します」
 保健室に入る。そこには椅子に座る谷の姿がある。
「谷、大丈夫か?」
「え?大丈夫ですけど。五十嵐先輩どうしたんですか?」
「えっと、昼休みに谷が倒れてたから保健室に連れてきたのさ。心配でね」
 少し嘘をつく。倒れていたのではない。まぁ操られていたなどといっても信じてくれないだろう。
「そうなんですか、ありがとうございます」
 谷は頭を下げて謝る。
「どうってことないさ」
 俺は保健室を見回す。ベッドに男子生徒が一人横たわっている。
 それは良く見知った顔…金部だ。金部は俺がさっき殺したはずだ。
 金部が生きているということはケイが斬った不良も生きているのだろうか…
「…金部がなんでここにいるんだ?」
「え?金部さんならさっき先生に連れられて運ばれてきましたよ」
 俺が金部を殺したという罪はなくなった。…金部を殺した瞬間のスリル。
 それはやみつきになりそうだった。恐いと同時にスリルを求めて…
「ココの先生は?」
「金部さんをつれてきてどこかにいっちゃいました」
 俺は身体の傷を癒したかった、かなりのダメージだからだ。
 不良からの数撃。それに金部の風。そして約2メートルからの落下。
「消毒だけでもしておくか」
「あら、血が出て…」
 谷は俺に近づき自らの手と俺の手を合わせる。
「助けてもらったお礼です」
 そして眼を瞑り何か言う。すると俺の身体に力が漲ってくる。
「これは、一体…」
「私、不思議な能力があるの」
 谷も能力者だというのか…
「俺にも能力がある」
 そういい心の中で影を呼び出す。
 保健室の灯りで浮かび上がった影…
「影…」
 暗かったらだったら使えないのかな…そう思いながら戻れという。
「どうだ?影使いの能力は。谷が能力者だったなんてな…」
「すごいですね。はじめてですよ。私の能力を見せるなんて…私以外の能力者を見るのも」
「まぁな、他にも能力者はいるんだろうけど」
 言いながら綾とケイを想像する。綾は風使い。ケイは剣使い。俺は影使い。
「帰らないのか?」
「今、帰ろうと思っていたところです」
 谷に"一緒に帰らないか?"と言ったが"いいです。五十嵐先輩は宿舎でしょう?"と言われ言い返せなくなった。
「それじゃ、玄関まではいいよな」
「はい」
 俺と谷は鞄をとり玄関へ向かう。そしてわかれる。
「さてと…宿舎に戻るか…」
 俺は宿舎に戻りベッドに倒れ込む。そこにケイが帰ってくる。
「おう、戻ってたか」
「ケイか…」
「話さなきゃいけないことがある…」
 知らない事が多すぎる。
「ありすぎるだろ。まず…能力者とはなんだ?」
「想像はついているだろうが特殊な力を持つ者だ。そのうち慣れるさ」
 慣れる…この能力といる。それはまた敵…『闇の能力者』を呼ぶ事になるんじゃないか…そう考える。
「光の能力者、闇の能力者って言ってけどなんなんだ?金部は俺を救世主って呼ぶしよぉ…」
「俺達は光の能力者さ。敵方が闇の能力者、あいつらはこの街…東京を破壊しようとしている。
 救世主…千樹は光の能力者の救世主となる。光の能力者の中で一番の強さを持っているはずだぜ
 俺より強力な力をな。今は目覚めたばかりで力が抑えられているがそのうち開放される。
 敵方にも救世主はいるらしい。まぁこっちから見れば破壊者だがな。そいつが見つかれば闇にとってはかなりの戦力だ。
 危険だぜ。東京が一瞬で無くなっちまうかもしれない。それに闇は救世主ってことで千樹を狙うかもしれないな」
 俺は東京の運命を背負っている救世主ってわけか。
「俺はすでに関係させられているのか。急すぎる。整理が付いていない。俺を狙う奴が出る…?
 俺はまだ死にたくない。襲ってきたらソイツを消す。それが俺のために、東京のためにもなるんならな」
 俺は…生きるために戦おう。それで死んだっていい。どのみち…東京が消えるなら俺も死ぬ事になる。
「それじゃがんばってくれよ。ところでなんで怪我が無いんだ?あんなに傷があったのに…」
「あ、ああ…ある能力者に治してもらったよ」
「なに!?回復系の能力者がいるのか?」
「…谷だ。一年の谷 魅未」
「谷?まぁいい。能力者は多いほどいいからな」
 ケイは谷を戦力として加えようとしている?
「待てよ。女のこを危ないめにあわすわけにはいかないぜ」
「守ってやればいいじゃないか」
「誰が?」
 なんか答えがわかるようなきがする。
「もちろん千樹さ」
「俺かぁ…って…待て、おい!俺が谷を守る?今は力不足なんじゃないのか?」
「まぁ気にしないでさ。明日もあることだし…少し休みなよ。
 千樹の力は俺が保証するしさ。はじめてで羅衝剣を操れるのはすごしな」
 ケイはそういい出ていく。
 俺はそのまま寝てしまう。疲れていたんだろう。


SIDE:一葉 Part 3

 オレは自分のベッドで倒れていた。一日だけの安らぎ…
 それでもいい。今のときが続けばいい…そう思った


...To Be Continued? “Ability”Closed...



あとがき

さて…やっと『First Chapter -Ability-』は終わりです。
『Second Chapter』にご期待ください。
えっと…First Chapterは約460行。原稿用紙23枚分に値します。