Novel "創造主"

小説「創造主」は2000年に執筆・投稿された駆様の作品です。
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番外編=ルナの過去(後編)

「金目の物をありったけだしな」
短い髪にバンダナを巻いた男がメイナに言う。
しかし、メイナはそんな男の言葉にも耳をかたむけず、2階で眠るルナの元へ足を急がせた。
そして、そんなメイナの後ろを男は追いかける。
メイナは扉をバンっと開く。
「ルナ!逃げるのよ!!」
必死なかおでルナを起こすメイナ。
「どうしたのさ、こんな夜中に…」
眠たい目をこすりながらまだ、ポケーっとした頭をポリポリとかき、ルナは問いかける。
「何でもいいから! このロープを使ってそこの窓から逃げなさい!」
そんな会話をしていると、追手はすぐそこまでやってきた。
「この子には指一本触れさせません!」
両手を、ルナをかばうようにひろげるメイナ。
男は、腰に挿してある剣をとり、かまえた。
「そのガキは逃がしてやってもいいぜ。
その代わりお前命はないぞ」
男はじりじりせまってくる。
姪なの足は震えている。
「ルナ!早く!早く逃げなさい!!」
何が起きているのかいまだに判断できず、ただ立ちむルナにメイナは叫ぶ。
そしてその瞬間、銀色に輝く刃がメイナの身体を貫いた。
吹き出る血は、辺り一面を紅く染める。
そんな中ルナは放心状態になっていた。
しかし我に返り、ルナは必死に逃げた。
まだおさない足取りで…。
追いかけてくる男をふり切りながら――
そしてやっとの思いでたどり着いた所は町から5kmくらい離れた場所にある傭兵育成学校だった。
しかし、5kmもの道のりを全力疾走で走ってきたルナは、その場に倒れこみ、気を失った。
翌朝、傭兵育成学校の教官らしき男が疲れ果てたルナの姿を発見した。
「大丈夫かい?キミ??目を覚ましなさい」
とルナの頬を軽く叩く。
「…ん……??」
意識が戻ったルナは静かに瞳を開いた。
「大丈夫かい?」
優しい男性の声。
しかしルナはその男を警戒する。
無理もないだろう、昨晩あんな事件を見たばかりなのだから。
「大丈夫だよ、僕は君に何の害もあたえないよ?それより君の名前を教えてくれないかい?」
信用できる相手だったのだろう、ルナは簡単な自己紹介と昨晩の事件について話をした。
「……それは気の毒に…。ルナは傭兵学校に入りたいと思わないかい?」
「…それ、強くなれる??」
興味有り気な表情を男に見せるルナ。
「あぁ、強くなれるとも。しかし、強くなるだけじゃないよ、時には残酷な事だってしなきゃいけない」
「傭兵って、悪い人たちを罰したりするんだろう?それなら俺は母さんの敵を取るために…!!」
「そうかい…それじゃぁ行こうか」
男はルナの手を握り、学校の中へ連れて行った。
「なぁ?あんたの名前を聞いてない」
ルナは男に問いかける。
「僕かい?僕はアーク・カルテ」
簡単な自己紹介を済ませ、着いたのは学長の部屋だった。
ルナはお金もなく学校に入るのだから、入学は厳しいのだ…
しかし、なんとか入学の許可を取り、ルナは学長室から出てきた。
先ほどの表情とは一変し、生真面目な表情のルナはアークに敬礼をする。
「アーク教官、今日からこの学校の生徒になることになりました!」
アークもまた、ルナに微笑みながら敬礼をする。
なつかしい微笑だった…。
「おめでとう。ルナ・エクリプス、君も今日から僕の生徒の一員だ。立派に鍛え上げてあげるから、覚悟するように!」
アーク教官は学校内では強く、優しい教官であると有名だが、練習に関してはとても厳しい教官ということで有名なのである。
そして2人は握手を交わす。

―――――――――――10年後―――――――――――――――

「ルナくん、本当に行ってしまうのかい?」
「はい。俺ももう15だし、アーク教官のおかげで… こんなに強くなれました」
茶色の、肩まで伸びている髪を後ろで結い、微笑む青年は、何を隠そうあの幼かった少年、ルナ・エクリプスである。
「キミはこの学院で一番成績優秀だったからね…残念だよ」
「なにもかも、アーク教官のおかげです。俺はアーク教官にひろわれなかったら、今ごろはここに居ませんでした。そろそろどこかの城に属して依頼でも待ちますよ」
「本当にキミはたくましくなったね。アーク教官の事は残念だったけど…。この先何があってもくじけないように生きてくれたまえ」
アーク教官は昨年病気で亡くなった。
そしてルナは15歳になった今、傭兵学校を卒業しようとしていた。
普通は20歳くらいにならないと卒業できないのだが、ルナはどの生徒よりも強く、成績優秀だったので特別卒業できたのだ。
「本当に、10年間、お世話になりました」
「ああ、また機会があれば、たまにはここにもよってくれたまえ」
「はい、セリア教官も今年で50歳ですお体に気をつけてください」
ルナは別れを惜しみつつ学校を後にした。
そして、その6年後、ルナが今世代の創造主になったことをセリア教官は知る事になる。

The End

番外編も終わりましたvv
で、ほかのキャラの番外編も読んでみたいという声が多かったので、
次回はティーンとアーチェのその後でも書きますかねぇ。
座談会はもうしばらくお預けです。