- Novel
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能力空間-Ability Space-
First Chapter 能力-Ability-
SIDE:五十嵐
夜…静かな街、そこに悲鳴がこだました。
『ギャー』
俺には何が起こったのか理解しかねる。
一瞬で目の前の男の左手がチギレタのだ。キレタ…切断されたのではない。
恐怖しワケがわからぬままその場から逃げ出していた。
『逃げ出して良かったのか?』わからない…
『あの男はどうなったのか?』想像もできない…恐ろしい。
逃げ続ける。何も追ってこない。それはわかっている。
『どうして逃げている?』現実から逃げたい…?厄介ごとに顔をつっこみたくない
落ち着こう。そう思い足を止める。
『俺は誰だ?』俺は『五十嵐 千樹』。東京都私立亞須深高等学校に通っている。
『男の手がチギレタ…なぜ?』わからない…『チギレタ』ってことはなにかに『チギラレタ』ということ…?
『なぜ逃げ出したんだ?』自分が悪いと思ったから?…違う。恐くて…恐怖のため?…多分そうだ。
『ココはドコだ?』ココは多分裏通り。さっき逃げ出したところが3番通りだったから間違いない。
『コレは夢か?』現実だ。疲れてる。
落ち着いたかな。
『さっきの男は無事だろうか?』少なくとも無事ではない。左手がなくなり無事な人間など存在しないだろう。
俺は一旦帰路につくことにした。その途中で何が起こるか…知らないで…
SIDE:一葉
『ギャー』
オレは叫んでいた。それはオレの左手がチギレタたからだ。何が起こったのかわからない。
人間の…生身の体がこんなになるとは考えれない。なんでこんなことになったんだ?
左手からかなりの出血が確認できる。
いや、考えている暇は無い。ここに居てはいけない気がする。
誰もいない、見えない。しかし、だれか居る感じがして必死に…無我夢中で逃げた。
誰かに追われている…そんな気配がする。ふりむいてもだれもいない。
オレの左手はもう治らないだろう。
ライトで彩られ…眠らない道ともいわれる表通りにでる。それからは追われるというのを感じない。
左手から血が流れ続けている。とりあえず病院に行かなくてはならないだろう。
今にも貧血で倒れそうだった。倒れれば楽になれる。しかしそのまま死んでしまったら意味が無い。
意地で病院に行かなくては、今死んでは今まで生きた意味が無い。
しばらく歩き中央病院に着く。その時は意識が途切れ始めていた。
受付に近寄る。受付の女性はオレのひどい出血に気づき電話を手に取る。
すぐ医者が近づいてくる。即手術の準備が整ったようだ。
やはり大きい病院は素早くて良い。それからオレは意識を失う。
SIDE:五十嵐 Part 2
俺は裏通りを歩いていた。学校に向かうためだ。学校の宿舎。
闇夜の中後ろに微かな気配を感じていた。後ろを見ても誰もいない。
俺はこの夜のことを忘れないだろう。奇妙な体験…それだけじゃ話しても信じてもらえないかもしれないだろうが…
「なんなんだよ…」
誰も答えない。独り言だったが答えほしい。
《死を感じろ…》
誰かが俺に囁いたように思う。気のせいか…?
《救え…》
「誰だ!?」
振り向いても誰もいない。微かな気配のみが残っている。辺りは月の光に照らされている。
誰なのだ…?男の声なのはわかる。幻聴なのか…?
ふと眼に入る自分の影。
「影…?」
月の光でできた影…
《救世主よ…》
影から声が発せられている。
「俺の頭…イカレちまったか?」
《世界を救えるのは…》
「確かに聞こえるな。幻聴ではない。だが…『影』だと…」
《この街の事件を停められるのはお前だけなのだ…》
「事件…?さっきの左手のことか?」
《お前の能力がこの街を…世界を救うのだ…》
「能力…?」
それから影からの声は聞こえてこない。
「なんなんだよ…理解できないぜ…」
俺は歩き始める。学校前に到着。門はとっくの間に閉まっており飛び越える。
宿舎の鍵も閉まっていて窓から入るはめになる。
普通見られたら泥棒と誤解されるだろう。次に二階の俺が寝ている205号室に向かう。
ソコは4人部屋で俺以外に2人いる。
一人は遊び好きで毎晩ココを抜け出してる『林 綾』。
もう一人はここ宿舎の長。寮長でありながら生徒会長を務める『平沢 ケイ』。
…疲れの限界を感じベッドに倒れる。
SIDE:一葉 Part 2
「…?」
オレは眼を開ける。真っ白な天井しか見えない。首を少し横に動かすと窓が見える、太陽が眩しい。
動けない、身体に力が入らない。左手が無いということは感覚的にわかる。
止血などの手術をした程度か…『助かった』それだけで十分だ。しばらくじっとしていると病室の扉が開く。
白衣の男…医者だろう。ネームには『河村 福次』と書かれている。
「…大丈夫ですか?」
「はい」
声を出す。
「さて、どう話せばいいのか…単刀直入に言いましょう。あなたの左手は治らない。義手に変えればいいのですが…」
「そうですか。今のままでいい、義手は遠慮します」
オレは何も動じない。
「手術は大変でしたよ。傷口が自殺の時のアレと違いバラバラ。骨までいって…事故にでもあったんですか?」
「まぁ…事故っていうのか…なんとうか…手がチギレタんです」
「あの起きて話しません?」
少し体を上へ起こそうとする。やはり力が入らず寝たままである。
「動けないんです。身体に力が入らなくて…時間が経てば治りますから」
「…ところで『チギレタ』とは?事故でもこんな傷口にはならないかと…それに誰かに『チギラレタ』ということになりますけど?」
事故…何者かに手を掴まれその瞬間に左手が地に落ちていた。
「わかりません。気が付いたときには左手は無く叫び…あの場から逃げ出してましたから」
「あなた落ち着いてますね…」
「オレも医者ですから…こういう時に冷静じゃないと駄目ですし」
オレは都内で二番目に大きい病院。『赤井総合病院』に勤めている、22歳、『一葉 和哉』だ。担当は精神科である。
「あなたが医者…なんて型破りな…」
いわれる通りだ。オレの容姿は金髪にピアス…普通はしない格好か…
「そうですね。よくいわれますよ」
苦笑いし言った。
「赤井総合病院ですか?」
「ええ、精神科の一葉です。左手が無くても仕事に支障がでるわけではないです」
「噂はお聞きしますよ。すごい先生がいたって研修生が言ってましたから」
「あの…いつ退院できるんです?オレには仕事があるんで…」
「身体が大丈夫ならば今日中に退院していいですよ。許可はとっておきます」
「それじゃ…少し一人にしてください」
「わかりました」
河原先生は出て行く。
「着替えて散歩でもしますか」
オレは起き上がり退院の準備をし着替える。病室…五階を後にしエレベーターで一階に降りる。
タイル、壁紙は真新しく真っ白。さすが2年前できたばかりの病院だ。
ふと眼が精神科へ向く。そこに女性が座っていて、話かける。
「あの、精神科に用ですか?」
彼女は少し戸惑い答える。オレの容姿ではしかたがないことだ。
「はい、周りで最近嫌なことばかりおこるんです。それで心の問題だろうって…友人にいわれて…」
オレは少しアドバイスする。
「君の心は少し弱いようだ。君が笑顔でいれば他の人も態度を改めるだろう。
そうすれば気持ちから問題など無くしてくれるのではないかな」
赤井総合病院精神科医は現在オレだけ。それだけ人の悩みを聞き解消してきた。
人の痛みは痛いほどわかる。それを…心の隙間を埋めてやればいい。
「そうですね。私は…最近嫌なことばかりで…気が滅入っていたのかもしれません。
これからは笑顔を心がけます…なんかがんばれそうな気がしてきました」
「それならいいさ、オレは赤井総合病院の精神科医、一葉っていう。相談事、心に病気を持ったなら来てください。
なんでもうけますよ。その時は治療費をいただきますがね」
それから時間が経ち退院する。病院の外に出る。
一度深呼吸をし家へと向かった。
あとがき
さて…やっと『First Chapter -Ability-』は終わりです。
『Second Chapter』にご期待ください。
えっと…First Chapterは約460行。原稿用紙23枚分に値します。