- Novel
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能力空間-Ability Space-
First Chapter 能力-Ability-
SIDE:五十嵐 Part 3
「起きろよ。おい!」
俺は起こされる。
「おはよ」
目の前にいる同い歳で同室の『林 綾』に言う。
「おはよう」
綾は返してきた。
「珍しいねぇ…あーやが朝から居るなんて…」
綾『りょう』…文字だけを見れば「あや」とも、よべ俺はそう呼んでる。
「あーやはやめろ。俺はりょうだ」
「あれ…ケイは?」
「もう8時だぜ?あの生真面目寮長がいるわけねぇだろ」
ケイ…平沢 ケイは寮長であり生徒会長である。
「学校か…」
「ああ、俺等も行こうぜ。飯食ってよ」
「そうだな」
俺は夜のままの服で食堂へ向かう。
朝食を食べながらテレビを見ていると耳に入るニュース。
『昨夜未明、都内頴娃軟<えいなん>区三番通りで通り魔事件が発生しました。現場の桜井さん』
三番通り…昨夜俺が事件に遭遇したところだ…
『はい、現場の桜井です。ここ三番通りは夜になると人通りは絶え寂しい場所です。ここに夥しい血痕があります』
チョークで囲まれたところ…多分あの男の左手が落ちていたところだろう…その辺りに血が散乱している。
『左手だけが切り落とされ、現場付近のアパートの住人が通報したそうで被害者は病院に自力で行き現在入院中とのことです』
あの男が無事だった。それで十分だ。やはり俺は心で何か心配していたんだと思う。
そしてテレビの画面が戻りホワイトボードで説明している。
「おい、千樹。行こうぜ」
「そうだな」
学校の準備をし少ししてから宿舎を後にする。学校とは30秒という距離だ。もちろん遅刻はほとんどしない。
「さーて、と。俺は屋上で寝るから出欠とっといてくれよ」
綾はそういい階段を登る。
「あーや、たまには教室に顔出せよ。真紀ちゃんが寂しがってるぜ」
俺はからかうように言った。真紀…綾の彼女で『高原 真紀』という。
「かまわねぇよ。そんなやわな女じゃねぇ」
「ふぅ、いいのかなぁ…」
その時には綾の姿はない。教室に行き出席をつけ授業をうける。
時が経つのは早く12:45。午前の授業は終わる。
俺は教室を後にし売店へ向かう。一応食堂はあるのだが売店のほうが好きだ。
とりあえずピザパンとカレーパンを買い売店を出ようとする。
と、階段を降りてくる綾の姿。
「おう、よく眠れたか?…傷、大丈夫か?」
綾は所々に傷がある。
「まぁな、ちょい喧嘩があって止めただけだ」
止めたというよりは加わったってところか…
「さてと、俺は食堂行くわ」
「それじゃ…」
いいかけたと同時に声が発せられる。
「綾!」
綾の彼女、真紀である。
「元気してっか?」
綾の言葉を無視し真紀が言う。
「綾…なぜ教室に来ないの?」
「勉強してくねぇし、屋上で寝てるからさ」
「なぜ?夜寝ればいいじゃない。夜…どこかにいってるの?」
「えっと、そ、それは」
すかさず俺はフォローに回る。フォローになっていないかもしれないが今のあーやなら何も言えない。
「麻雀だよ。麻雀。夜通し麻雀やってんだよ、あーやはさ」
「え?麻雀」
「お、おい…千樹…まぁ、何も賭けないしいいじゃねぇか。仲間同士だからかねもかからねぇ。雀荘よりいいぜ」
時々宿舎でも麻雀をやっている。
「てっきり私を避けてるのかって…夜だれかとあってるんじゃないかって…心配したのよ」
だれかとあっている…この場合は女ってことだな。
「俺には真紀しかいないさ」
「私もよ…」
そしてラブラブモード突入…?
俺は呆れて階段を上る。屋上へ行き飯を食うためだ。
屋上に続く扉を開ける。そこには誰もいない。
「さてと、授業もあるし食うか」
遠くの景色を見ながらの食事…まぁ辺りはビルばかりだ。
飯を食い終わり屋上から出ようとする。少し寒気を感じる。
《救世主よ…救え。この学校の能力者が…》
影…?
「おい、能力者ってなんなんだよ」
影は答えない。
「くそ、嫌な感じがするぜ」
すると無人の屋上にもかかわらずナイフが飛んでくる。そのナイフは俺の髪を少し切り落ちる。
「誰だ!?」
そこにはうちの学校の女子生徒がいる。その女子生徒は見慣れた顔。
「君はたしか…一年の谷…?」
俺の後輩で『谷 魅未』委員会が一緒だ。
「…能力者を殺す」
殺す…?考えている暇も無く飛び掛かってくる。
「お、おい」
俺は避けるしかない。女子生徒に手を出すなんてどんでもないからな。
「くそ、どうなってやがる…」
『谷は普通か?』普通じゃない。薬に手を出したとしてもこうはならない。俺だけが標的と言っていいようだ。
『谷が影の言う能力者なのか?』そうなのかもしれない。しかし確信はない。とりあえず今の対処法を考えたほうがいい。
「たしか…」
たしか先輩に教えてもらった護身術…首の後ろを叩いてやれば気絶するはず。
俺は向かってくる谷を避け後ろに回り込み首を少し叩く。谷の身体は崩れ倒れる。
「うっし、さて…どうするかな。保健室につれていくのが最善か…」
谷の身体を抱え屋上を後にする。その時には既に休みが終わり生徒の姿はない。階段を降り保健室に着く。
ノックし入る。廊下で倒れていたというのが妥当か。しかし先生の姿はない。
とりあえず谷をベッドに寝かせる。
「ふぅ、どうしたもんかな…」
先生を待つしかないか。俺は椅子に座り考える。
『谷は操られていた?』さっきの行動からして自分の意志で俺を襲ったとは感じ取れなかった。
『だとしたら誰に?』…多分、影がいう能力者か?
『能力者とは?』やはり特殊な能力を持った人のことか。しかし俺にはそんなものない。
足音が保健室に近づいてくる。先生だろうか?戸が開く。そこには同級生の金部…『金部 啓史』がいる。
「おう、どうしたんだ?」
「…能力者め…」
金部も変になっちまってる?いや、操られているのではない。自分の意志で言っているようだ。
「能力者って…なんなんだよ?」
「…知らないのか?想像はついているだろうが特殊な能力を持つ人間だ」
「俺は能力なんて知らないぜ?ましてそんな能力を持ってもいない」
「あちら側の救世主は消せ。それが主の望みだ。死んでもらう。」
「あちら側…?救世主…?主…?」
俺には理解できない…
「救世主は殺す…」
「ま、まてよ。ここじゃなんもできねぇだろ?屋上へ行こうぜ」
逃げれない、そう思った。逃げたとして…他人に被害がいったらどうする…そう考えたうえで…
「いいだろう。どうせ貴様は死ぬのだからな」
俺は足早に屋上へ向かう。そして影に話し掛ける。
「さて、影…俺の能力はなんだ?喋らないからって無視していたが聞こえているんだろ?答えろ!」
《救世主よ。お前の能力は影使い-Shodow Master-だ。他の能力は自分で引き出すがいい…サラバだ…》
「サラバって…おい、まてぃ!」
「なに独り言を言っている。行くぞ。五十嵐 千樹に死を与える。Control Magic!」
「ふぅ、影使いねぇ…まぁいいさ…この場を凌げれば…」
相手の能力は…操り…操りの金部…か。さて…どうすればいいんだ…取りあえず叫ぶ。
「影!」
すると影は浮き上がり立ち上がる。黒い俺のコピーのようだ。
「ほぉ…貴様は影使いか…俺は知っての通り操り師-Handler-だ。」
屋上の扉が開く。金部はそれを確認し笑う。扉の先にはうちの学校の不良がいる。コイツ等を操ったというのか…
「コイツ等が俺の僕だ。行け!」
不良達が俺の方へ向かってくる。
「そんじゃ、影…行け!!」
影は不良に突撃する。一人二人、倒していくが不良はすぐたちあがる。そして影が殴られた。すると俺の体はフェンス越しまで飛ばされる。
「どうなってるんだ…こりゃあ…」
影へのダメージは俺に反映されるということか。
「くそ…」
影は不良を倒すがすぐ起き上がり限が無い。
「コイツ等は生ける屍、何度でも立ち上がるぜ。貴様を死に追いやるまでな」
「どうすればいい…」
屋上の扉が再び開く。不良の増援だとでもいうのか? だとすれば俺に勝ち目はない…
あとがき
中編…さて…やっと『First Chapter -Ability-』は終わりです。(嘘)
『Second Chapter』にご期待ください。
えっと…First Chapterは約460行。原稿用紙23枚分に値します。
文庫本の一話。約25頁に値します。(多分…そうだよね?)