Novel

Arc D'z(アーク・ディーズ) LegendHunter 《酒場の物語》

 そこは荒くれ者の集まる酒場だった。
 しかし、気の良い者も多い。
 多くの客はプライズ・ハンター《賞金稼ぎ》、トレジャー・ハンター。情報交換の場としているのだ。
 店名は「ネバー・フューチャー」、終わる事のない未来を求め続ける者の群れる酒場。

 迷惑を運ぶ男がバーカウンターの隅に座っている。
 凄腕のプライズ・ハンター、名はグルディア・ヴァレスという。
 後に伝説の賞金稼ぎと呼ばれる男である。
 マスターがグルディアに話し掛けた。
「ア・ダラク・テイースキンはどうだった?」
 グルディアは荒々しくショットグラスの酒を飲み干し、溜息をつく。
「療養中だ。毒にやられて生きてるだけ、いいがな」
 ア・ダラクはトレジャー・ハンターで、プライズ・ハンターのグルディアの相棒ともいえた。
 グルディアはプライズ・ハンターをしない時期、トレジャー・ハントを仕事としている。
 幾度と無く死にかける、生と死は正に紙一重なのだ。
 グルディアにとっては、その快感がたならなく新鮮でいいのだが。
「そうか、まだ出られないか。あの時は、何故避けなかったんだ?」

 ア・ダラクが毒に侵された理由……
 状況はグルディアとア・ダラクが酒を飲んでいる時。
 能力持ち犯罪者《D'z(ディーズ)》の毒使いがネバー・フューチャーに入ってきた。時は明け方、客は二人だけだった。
 酒を飲んでいたということもあったが、それにしても並外れた力を持っている者が簡単にやられる筈がない。
 ア・ダラクが油断したグルディアをかばい、毒に侵され、グルディアはア・ダラクを医者に運ぶしかなかった。
 以来、D'zの毒使いは捕まっていない。

「さぁな。ア・ダラクも、酔ってたんじゃねぇのか?」
 グルディアはあえて自分をかばっての事だと言わなかった。
 マスターがグルディアから離れ、仕事に戻る。
 グルディアはカウンターに一丁の銃を置いた。ロスト・テクニックによって作られた銃、レスト・ガンだ。
 ネバー・フューチャーの扉が大きな音をたてて壊れた。
 壊れた扉は、紫に変色している。
 グルディアはレスト・ガンをベルトに掛け、扉を壊した者を睨んだ。
 壊れた扉の近くには毒使いが立っている。
 一般人は窓から逃げ出し、プライズ・ハンター達はそれぞれの武器を構えた。
 マスターは溜息をつき、カウンターの下に隠れた。呟く声は誰にも聞こえなかっただろう。
「ドアの買い替え代、酒代、赤字だ……」
 客としてバーにいたグルディア以外のプライズハンター達が毒使いに襲い掛かる。
 毒使いが手を振り回すと、プライズハンター達は床に倒れていく。毒が回ったのだ。
 グルディアは口にタオルを巻き、毒使いと向い合った。
「グルディア・ヴァレスよ、御機嫌は如何かな?」
 毒使いは笑う、グルディアもまた笑っていた。
「今は最高だ。賞金100ドラグ、毒使いクドー・ルカが目の前にいるのだからな。ア・ダラクの仇もとる。……俺に勝てると思っているのか?」
 クドー・ルカは戦争の国、東満出身のD’zで、毒を扱うD’zでは名の知れた男であった。
「私はそこらのプライズハンターズに目をつけているわけではない。
 君だから目標にしたんだ。勝てるかどうかなど、知らんさ」
 クドーがグルディアに向かい走る。
 右手でかかってくるクドーをグルディアの左手がうける。
 左手が毒に侵されるのは承知の上だ。
 レスト・ガンの引き金がひかれ、光が放たれる。
 クドーの肢体が、店内を飛び、壁にぶつかり倒れた。
「ア・ダラク、また酒でも飲もうぜ。俺のおごりでな…」
 グルディアは、毒に侵された自らの左手を撃ち抜き、バーマスターに酒を注文するのだった。

劇 終

あとがき
2001/04/23に書いたSS(サイドストーリー)。はじめて書いた小説…DARKNESS CRIMINALの外伝です。

"DARKNESS CRIMINAL LegendHunter" Present By "mikito" 紅堂幹人