Novel

小説「暗殺者」は琥珀 瑠南様の作品です。
Copyright © 2000 琥珀 瑠南. All rights reserved.

暗殺者

そこは暗い闇の中。
そこは生をつかさどる者の居場所。
そして、それは死をもつかさどる…。

暗い夜の闇の中で悲鳴とともに一つの命がきえた。
その命は汚れていた。もう、なおしようもないくらい…
だからといって命を奪っていいのかと思う人もいるかもしれないが、そいつの奪った命の数に比べれば少ないほうだ。
血の色に染まる暗闇に2つの人影が動いた。
まだあどけなさを残す面影。
それはどこからどう見たって2人の子供にしか見えなかった。

「アルマ様。任務完了しましたぁ。」
そのまだ幼さを残す声が部屋いっぱいに響いた。外見からして12~14歳くらいであろう。
「スー!そんな大声出したらアルマ様に失礼だぞっ。アルマ様は今報告書を書いてるんだ。じゃまになったら悪いだろっ。」
スーと呼ばれた少女の近くにいたスーと同じ年くらいの少年は怒鳴りつけた。
「だってぇ…」
と、その時目の前にいた黒い長髪のめがねをかけた男が立ちあがった。
「いいんですよシブレ君。にぎやかでいいじゃないですか。」
「けどアルマ様…。」
シブレと呼ばれた少年はそういいながらアルマをじっと見た。
「それより今回の任務の報告にきたのでしょう?」
そういわれるとシブレは慌てて報告をしだした。
「ナンバー25864シブレート・サイルス、ジョン・カルシター暗殺任務終了しました。」
「ナンバー25878スー・アレマース、同じくジョン・カルシターの暗殺任務終了しましたぁ。」
シブレに続き元気そうに言うスー。
「任務ご苦労。で、暗殺用法は?」
「銃殺ですぅ。」
またしてもスーは元気そうに答えた。
それを見たアルマはため息をついた。
「スーさん。一応、人を殺した後なんですよ?普通はそんなに元気そうに言っちゃいけないんです。わかりましたか?」
それを聞いたスーは元気にこう答えた。
「はい。わかりましたぁ。」
どうやら、わかっていないようである…

ここはセイルマーという国で結構大きな王国である。
この国は大きいせいか犯罪が絶えない。
そしてこの国のある世界には昔から創造主がいると信じられている。
その創造主は生と死をつかさどり、どこかでこの世界を見ているという。
そして、その者はあまりにも命の汚れた人達をある者らにいって始末させるという。
その始末する人達をぞくに「ディズポウズ」と呼ぶ。
そしてそのディズポウズ達はある組織に属してるという。
その組織には子供から大人までいて創造主から言いつけられた仕事を遂行している。
スーとシブレはディズポウズで、そこの組織のものである。
そして、ここの子供にはみんな親がいない。
捨て子や、病気や事故で親をなくした子達である。

ある日のことだった。
「スー。シブレ。アルマ様が呼んでるぞ。」
そう言われ2人がアルマのいる部屋へと向かうとそこにはあるかわいらしい少年がいた。
「やあスーさん。シブレ君。新しい任務が入りました。」
そうアルマに言われて2人は少し目を輝かせた。このごろ任務がなくてひまだったのである。
「今回のターゲットはパルシュ・クルア。35歳の男。連続殺人犯の犯人で今まで12人の人達を殺しています。」
そう言うとアルマは数枚の紙を手渡した。
「これは詳しい資料です。失敗したら殺される可能性があります。気を抜かないよう任務遂行をお願いします。あ、それと…。」
アルマは思い出したように言った。
「この少年は今回一緒にやってもらうシュウ・サリュー君です。あともう一人男の子がいて、ラピト・ハンタク君といいます。
 力を合わせ、がんばってください。」

「ふー…。今回はなんか人数多いな。」
シブレは資料をのぞきこみながら言った。
「なんでだろーね。そんなに今回の人、大変なのかなぁ…。」
そういうとスーは眠たそうにあくびをした。
すると、今回いっしょにやる少年のシュウとラピトが二人のもとへ歩いてきた。これから作戦会議である。
「あんたらがシブレートとスーか?」
「ああ。そうだ。」
するとラピトはその場のいすにどっかりと腰掛けた。
「じゃ、作戦会議はじめようぜ。」

それから3日後の夜。その日が作戦遂行日だった。
4人は黒い服を着て闇にまぎれていた。
すると、近くにあった家の明かりがついた。
「よし、じゃあいくぞ。」
そう言うとシブレは地を蹴って走り出した。そのあとに3人は続く。
4人はさっき明かりのついた家のドアの前に立つとそれぞれ違う物の影に隠れる。
中には一人の男がいた。
その男は座って酒を飲んでいた。今日殺されると知らずに…
シュウはその時その男の顔を見て愕然とした。
その顔には見覚えがあった。
それはすごく懐かしく、それでいて番嫌いな者であった。
今日実際に殺すのはシュウである。
果たして自分にそれができるのだろうか…。
シュウはそう思った。
そして、時がきた。
「入るぞ。」
シブレはそう言うと窓から中へ侵入した。
それにまた3人は続く。
部屋の中は真っ暗だった。今回のターゲットは寝てるらしい。
シュウはポケットからナイフを取り出した。
それをそっとターゲットの首筋にあてる。
あてながら、シュウは言った。
「バイバイ。お父さん…。」
それを聞いたラピトは驚いた声で言った。
「おとう…さん…って、もしかしてこいつが…。」
「そうだよ。この人は僕のお父さんだよ…。病気のお母さんを見殺しにしてでてった…お父さんだよ…。」
そういうとシュウは話し始めた。
「僕はこいつが憎かった。病気で死にそうなお母さんを見殺しにしてでてったんだ…。
そのあとお母さんは死んだよ…。毎日毎日うらんでた…。けど、いざ殺すとなると殺せないもんなんだね…。」
すると、今回のターゲットの目が開いた。どうやら起きてしまったようである。
「シュウか…。」
男はそう言ってシュウのほほに手をあてた。
するとシュウは手に力を入れ、こう言った。
「ごめんなさい…。ごめんなさいお父さん…。」
そして男は闇を赤く染めるように血しぶきをあげた。
すると、男は苦しそうに、けどやさしく言った。
「大きくなったな…シュウ…。」
そしてさっきまでシュウのほほにあたっていた手が力なく崩れ落ちた。
その瞬間、シュウの目から知らぬまに涙があふれ出ていた。
「お父さん…。」
そういえばお父さんはよく僕と遊んでくれていたな…。
よくいろんな事教えてくれたな…。
シュウはその記憶一つ一つを引きずり出していた。
懐かしい…記憶…。
もう戻らない瞬間。

「アルマ様。今回の任務終了しました…。」
その後、4人は組織に戻っていた。
これほど悲しい任務はなかった。
普段明るいスーも今回は一言もしゃべらない。
ラピトはうつむき、シュウはぼーっとしていた。
もうこんな任務だけはしたくない。
けどディズポウズである限りやらなくてはいけない。
ディズポウズをやめても行く場所はない。帰る場所もない。
なんでだろ…。
すると、なにかあったことに気づいたアルマは言った。
「どうやら大変な任務だったのですね…。創造主様はすごい任務を与えてしまったのですね。」
そして彼はこういった。
「泣きたかったら泣きなさい。我慢したってなにも変わりませんよ…。」
そして、4人はそれぞれの部屋へ戻った。

Fin.....?