Novel "創造主"

小説「創造主」は2000年に執筆・投稿された駆様の作品です。
Copyright © 2000 駆. All rights reserved.
当サイトの掲載に当たり本文・ストーリー・筋書には手を付けていませんが、禁則処理等を編集し掲載しています。

▼あらすじ▼
夜中に外に出て行った創造主は一人、夜空を眺めていた。
そこにルナが来て――



『創造主』第7章―決心の夜(後編)―
「お前が……」
「俺が…?」
「お前が次の創造主になってくれないか?いや、なってほしい……」
「ふ~ん、俺が創造………えぇ!俺が?!」
「あぁ、お前が…だ。私の命もそう長くはない様なのでな……。
創造主はハッキリ言って人生の重荷になるだろう…。」
「俺が…創造主…」
「お前の心はとても純粋だな。お前を見ていれば分かる。
その純粋さが、この世界をよい方向へといざなってくれるだろう…」
ルナの表情はだんだん切ないものへと変わっていく。
「悪いけどさ…俺、創造主なんかになれないよ…俺がキミを死なせる権利なんかない。嫌なんだ…俺の目の前で人が死んでいくのを見るのは…もう、嫌なんだ…
あの時、親父には『母さんは病気で死んだ』って言ったけど…本当は殺されたんだ!俺の目の前で…。母さんは最後の力を振り絞って俺を逃がしてくれた…。
俺は強くなろうと思った。だから傭兵になったんだ。もう二度と大切な人を失わないように…強くなろうって決めたんだ!」
ルナのオレンジ色の瞳からは大粒の涙が零れ落ちてきた。
「あんたもつらいんだよなぁ?」
アースはルナの頭に手をのせて、ルナの頭をなでる。
「アース……。俺にもなれるかな…。創造主に…」
「創造主は純粋な心の持ち主。さっきも言ったように、お前にはその要素がじゅうぶんにある。」
ルナはアースの細く、折れてしまいそうな方を抱きながら泣いた。
「もう、誰にもつらい思いはさせないからっ!悲しみも、苦しみも、憎しみもない世界を作るから!もう二度と――」
ルナの声は震えていた。
悲しそうな顔でルナを慰める少女。
なんて可哀想な娘〔こ〕だろう…
25歳で成長は止まり、今まで孤独に世界を背負ってきた少女。
なんて強い娘〔こ〕だろう…。
ルナは心の底からそう思った。
「明日、城に戻ろうか…この夜空とも今夜でお別れだな。もう二度とこの星空も見れなくなる…そして月〔ルナ〕も…」
地球が月にKISSをする。
もう見る事のできない月に、この大地に…別れを告げるように静かに目を閉じて―
全ての別れに涙する。やがて日が昇り、鳥が鳴き、大地の鼓動が聞こえる―
「夜明けだな……」
「……」
「行こうか」
ルナとアースは研究所に戻り、城へいく準備をした。
そこにジンクスが現れ、ルナの肩に手をのせた。
「さて、ルナ。これからお前もいろいろあるだろうけどな、そんなのにいちいちくじけてちゃぁーダメだ!しっかり頑張って来い!まぁ…体を壊さない程度にな…」
「あぁ、分かってるって!頑張り過ぎないように頑張るさ」
ルナはジンクスと握手を交わし、研究所を出た。
「あ~あ、このたびも終わっちゃうんだね…結構楽しかったな…」
「旅は遊びじゃない……」
アーチェの言葉にティーンは突っ込んだ。
最近誰にでも突っ込みを入れるようになったティーン…
きっとルナのせいだろう。
「それじゃー元気でなぁ!!」
ジンクスは両手いっぱいに手を振り、別れを惜しみつつルナ達を見送った。
「ジンクス…世話になったな……。」
「あぁ、結構楽しかったぜ!」
「ありがとう…。それでは、行こうか…」
アースは呪文を唱え始めた。
「ありがとな、親父!!」
「あぁ、たまには城下に来てやるよっ!」
ルナ達のからだが透けていく。
「テレポート!!」
アースの声はあたりに響き渡った。
ジンクスは手を振るのをやめ、呟いた。
「ルナ…。傷つき、悲しむ人のいない世界に…お前が変えるんだ」
ジンクスはタバコを口にくわえ空を見上げていた。


To Be Continued